(前編)の国内作品に引き続き(後編)では海外作品を紹介します。
※まだ(前編)を見ていない方は、ぜひそちらも見てくださいね。
⇒「発表!おすすめ怖~い短編小説TOP10(前編)」
それでは残りのおすすめ5作品もいってみましょう!
発表!だるまのオススメ怖~い短編小説TOP10(後編)※順不同
⑥ 茶色の朝 / フランク・パヴロフ
< あらすじ >
ある日、「飼い犬は茶色に限る」という法律ができる。悲しみながらも別色の飼い犬を殺処分する人々だったが、やがて新聞や日常の会話にも「茶色」の規制が及んでいき・・・
< 感 想 >
日常のことで忙しくしていると、施政者の言動にまでなかなか意識が向きません。違和感を感じながらも、つい思考停止をして周りに流されてしまいます。こういった無関心というのは施政者にとっては好都合なのでしょう。
茶色に守られた安心、それも悪くない。
この物語でも最初はささいな異変だったのに、やりすごしているうちに事態は悪化していきます。事の重大さに気づいたときには既に手遅れなのです。とても短い話ですが社会の一員としての責任に改めて気づかせてくれる一冊です。
⑦ ある殺人犯の告白 / サキ
< あらすじ >
刑の執行を目前に控えた死刑囚に『自分が有罪になるまでの経緯を聞いてほしい』と頼まれた教誨師。時間を気にしながらも耳をかたむける教誨師だったが、死刑囚の話は予想もしない展開になっていき・・・
< 感 想 >
自暴自棄になった時のどんよりとした闇に包まれるような感覚、それでいてどこかそれを楽しんでいるような気分。私にも経験がありますが、この死刑囚が事件に巻き込まれていく過程もそんな精神状態の時の、ほんの少しの気まぐれだったように思います。
『地方新聞の記事内容ビラに、不明の人物の手で僕自身が殺されたことを報じた文字を見ました。』
さらに焦りが判断能力を失わせ、不運に不運が重なり事態は悪化していきます。自暴自棄になっても、いつもの自分を見失わないように気をつけたいですね。
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⑧ 叫べ、沈黙よ / フレドリック・ブラウン
< あらすじ >
駅のプラットホームで列車を待っていた主人公。なかなか来ない列車にため息をつきながらも、ふと耳にした駅員たちの話が気になり口をはさむ。たわいない会話だと思っていたが、近くにいた男も巻き込み過去に起きた完全犯罪の話になっていき・・・
< 感 想 >
『聞く人の誰もいない森の奥で木が倒れたら、それは無音であろうか』― この問いから始まるこの短編は、殺人容疑をかけられた聾の男(?)と駅員の心理戦です。
『人殺しですよ、お客さん。あんたは今しがたまで、殺人犯の隣に座っていたんです。』
完全犯罪を立証するのは難しいです。この話でも駅員目線の一方的な主張だけが展開され、真実は明らかになりません。だからこそ余計に不気味で恐ろしい想像をしてしまいます。特に聾の男が最後にとった何気ない行動にはゾッとさせられます。
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⑨ 戸口に立つ少女 / リチャード・マシスン
< あらすじ >
夫と愛娘とともに暮らしていた母親の元に不思議な少女がやってくる。一人娘と遊ばせてほしいと頼まれ引き受けるが、その少女を招いたことによって娘の様子がおかしくなり幸せだった日常は少しずつ崩壊していく・・・
< 感 想 >
なんの因果もなく突然不幸が訪れる話です。この家族には落ち度はなく、現れた少女に対してもひどい仕打ちなどしていません。それでも情け容赦なく不幸は襲ってきます。
あの日、太陽が沈んだときに異変が始まったのだと思います。
この話を読んでいると、因果など人間の勝手な思い込みのような気がしてきます。たまたま不幸とすれ違ってしまった、ただそれだけのことで大切なものを失ってしまう。これでは防ぎようがありません。それだけに尚更恐ろしく思えてきます。
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⑩ 隣の男の子 / エレン・エマーソン・ホワイト
< あらすじ >
アイスクリーム屋で一人遅番をしていたドロシーは、閉店間近にやってきた同級生マットを店に入れる。奇妙な様子の同級生に嫌な予感がするドロシーだったが、マットはピストルを取りだし金を要求する・・・
< 感 想 >
登場人物のやりとりが生々しくて緊迫感があり、実際に起こりそうな話です。暴力で向かってくるマットに話術で対抗しようとするドロシーですが、やけに冷静です。この冷静さの理由もあとで知ることになります。それにしてもドロシーの話術は巧みで面白いです。
『筋ジストロフィーの子供たちのためのお金も持っていけば?なんなら』
良心の欠落したようなマットの反応も不気味で狂気を感じさせます。私が同じ目にあったら怖くてこれほど上手く立ち回れず、あっさり殺されそうですね(笑)
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あとがき
いかがだったでしょうか。事故・復讐・ストーカー・圧政・冤罪・不条理・猟奇殺人 ― 世の中にはこんなにもさまざまな恐ろしいことが潜んでいます。
こういった怖い作品を読むと、ほのぼのとした日常の裏の顔を警戒してしまう反面、平和な暮らしのありがたさが実感しやすくなりますよ。このブログの記事をきっかけに、そういった経験が一つでも増えることを願っています。
それでは楽しい読書ライフをお過ごしください♪
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